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2023'02.06 (Mon)

もう一歩踏み込もう

神々の復讐 人喰いクマたちの北海道開拓史

書評を読んでも、レビューを読んでも評価の良いヒグマ関係の本だったので、図書館にリクエストをかけたらピカピカの新本が来ました。

北海道やら樺太で起きた熊害事件を過去の新聞を網羅して、開拓史に沿って解説、考察した労作です。

時代背景や開拓の状況、ヒグマの遺伝子解析による系統分類等々、確かに資料的には参考になります。冒頭の羆害事件に関する各種マップはとてもよくできています。

でも、ヒグマの食害による悲劇が浮かんでこない🤔🤔🤔

三毛別羆事件を扱った「慟哭の谷」の谷は被害者の悲劇が胸に迫ってきたのに、この本は事実の羅列にしか見えない。開拓者の苦労が伝わってこない。心を打たない感じでした。

時代背景も説明はされていたので、鉄道の敷設によるヒグマ生息地の分断やら、軍事演習によるストレス、ゴールドラッシュ、炭坑開発による人間による自然環境への圧迫、樺太のパルプ業による大規模な森林伐採など、ヒグマのが被った数々のプレッシャー、中でも軍事演習とパルプ業による被害は新しい項目で、なかなか勉強にはなりました。

しかし、やむ無く起こった人とヒグマの邂逅の悲劇が記事の羅列で深堀りが足りてませんでした。

まとめの考察も現在以降の熊害に警鐘を鳴らしてはいるのですが、一般論に終わっている。

冒頭の熊害マップがよく出来ているだけに、作者にはもう少し独自のもう一歩踏み込んだ考察を期待していました。

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09:21  |   |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT   このページの上へ

2021'10.24 (Sun)

思ってたのと違う

最後の決闘裁判 エリック・ジェイガー

映画があまりに歴史心をそそったので、久しぶりに本を購入しました。(最近荷物が増えるので本の購入を控えてました。) 文庫本の値段が普通に1000円を超えてくるのでビックリです。

内容は「思ってたのと違う」です。

映画の原作としては正しいのですよ。間違いなくパリ高等法院が裁下した最後の決闘裁判の内容を年代記やら裁判記録やらから描き出しているのですが、期待していた時代背景やら社会的背景はアプローチされていませんでした。

決闘裁判とは何か、当時の結婚とは、持参金とは、騎士と従士の違いとは、世俗と教会の関係、封建制度とは、当時のフランス王国の状況(まさしく百年戦争の真っ只中で、しかもシャルル6世の発狂前)などをさらっとしかなぞってない...そのくらいkinkachoでも知ってるレベルしか描かれてません。

とっても欲求不満☹️

せめて、騎士と領主、領主と国王の関係を説明してくれないと、何故国王に直訴して、決闘裁判に至ったのかが映画程度しかわからない。

ちょっと図書館に行って社会学と西洋史学の概要書を借りてきます。

この時代のフランスって、まだ中央集権化が進んでなくて、ブルターニュ公やら、ブルゴーニュ公やら、ノルマンディー公やらがほぼ独立国家みたいなものなんですよね。

シャルル6世は幼くして即位したから、政治実権は叔父達が握ってたし、100年戦争の真っ只中で断続的に戦争やってるますからね。王権がとても弱い。なのに、領主の裁下を覆して王命で決闘裁判に持ち込めた。

中世と言うことで、教会勢力が世俗権力にがっつり食い込んでるし、下級聖職者(あれだけ女遊びしてても)のル・グリは聖職者特権で決闘裁判を回避出来たのに回避しなかった。

映画では決闘裁判に負けた場合、マルグリットも火刑になることを知らなかったことになってたましたが、現実に知らないことはないだろうに、ル・グリを告発したのは何故か。

いろいろ知りたいことは山積みです。

余談ながら、この決闘裁判の後、数年でシャルル6世は発狂して、王妃イザボー・ド・バビエールは売国妃と呼ばれるほどの悪名高い王妃になります。そして、それの裏がシェイクスピアの「ヘンリー5世」になるんですが、そこら辺でもクスリとできます。

09:26  |   |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT   このページの上へ

2014'08.01 (Fri)

受刑者は反省しない?

刑務所なう 堀江貴文著

あのホリエモンの獄中記です。
手描きの手紙で娑婆に出して、メルマガやツィッターにスタッフがアップしたもの+西アズナブル氏の獄中風景マンガから構成されてます。
近来稀に見る面白い本であったことを認めますが、結論から言えば、

受刑者を矯正するのは不可能!!
特に若年の猟奇犯罪者は本質だから矯正は不可能だと思ってる。

以前、LB受刑者の書いた本を読んだことがあります。
LB受刑者は基本的に「自分は運が悪い」としか思っていないし、罪を犯したことを反省はしていない。
懲役刑は犯罪者を社会から隔離することはできるけど、矯正をすることは不可能と思いました。
そして、この本を読んで思ったのは、ホリエモンはまったく罪を犯したという意識はない。
刑務所という自由の無い生活で、娑婆の生活の便利さや贅沢さを実感はしているけど、二度と罪は犯すまいとは思っていませんからね。
娑婆に出てから同じようにビジネスを始めて、運が悪かったらまた逮捕されるぐらいにしか思ってませんね。

何十年かで培われた性格や志向などが、たかが数年~十数年の獄中生活で強制されるとは思えません。
監視された自由のない環境に適応して、多少行動様式は改まるのでしょうが、娑婆の環境に出ればたちまち元通り…
不自由な生活とは言いながら、年末年始には年越しそばにおせち料理、夏にはアイスにお菓子、慰問会にカラオケ大会にスポーツ大会、テレビもそれなりに見れるし、映画はけっこう新作を見ている。普段の食事はヘルシーで、体調を崩せば場合によっては塀の外の病院にもかかれる。

真面目に働いて税金も社会保険も納めてるのに、生活保護より安い賃金や年金で、ちょっとした駄菓子はおろか、医者にもかかれない生活をしている人より、人間的でまともな文化生活をしています。

世の中おかしいんじゃないの???
20:55  |   |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT   このページの上へ

2014'01.29 (Wed)

なんかヌルイです

男性論 ECCE HOME ヤマザキマリ著

古代ローマのいい男を「テルマエ・ロマエ」のヤマザキマリが論じてくれるのかと思ったら、古代ローマの話はわずか30ページ、妥協できるルネサンスまでの男性論で+20ページとまったくの期待外れでした。
あとは、著者のエッセイマンガと被るお話です。

う~ん、まったくヌルイ…

「テルマエ・ロマエ」が面白かったのも三巻までだったし、著者のエッセイもいくつか読みましたが、ほとんど全てになんか竜頭蛇尾感が拭えません。
面白さが持続しないんですね。
漫画家として決して絵が上手い訳でもないし、ネタで引っぱらないとこれから先が難しいと心配になってしまいます。
なまじ「テルマエ・ロマエ」が映画化で騒がれただけに、商売として一発屋として浪費されてしまいそうなのが惜しいです。
この浪費が、最近の文壇やマンガ界で真の無頼派を育たない原因でしょうね。

その点、西原理恵子の「スナックさいばら おんなのけものみち」はしたたかさを感じます。
地に足がついたおばちゃんのしたたかさ?
西原さんは微妙にピンで勝負しない小狡さは本当にしたたかです。
中島らもの「明るい悩みの相談室」のパクリのような他人の投書で成立するこのシリーズや、「ああ○○」シリーズ、「人生画力勝負」、ここらへんの人気シリーズは全ては素人からプロの漫画家まで巻き込んで成立させてます。
思えば、彼女の最初の話題作「恨みシュラン」も神足氏と組んでの仕事でした。
ふり返れば、西原さんはツッコミをマンガ界に持ち込んだとも言えますね。
もはや芸風???

このぐらいのしたたかさをヤマザキマリさんにも要求したいと思います。
20:26  |   |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT   このページの上へ

2014'01.11 (Sat)

読み応えあり

今年は新年早々面白い文庫を探し当てました。

鹿島茂著
「パリ、娼婦の館 メゾン・クローズ」
「パリ、娼婦の街 シャン=ゼリゼ 」

鹿島茂氏の(たぶん)最初の一般書「明日は舞踏会」という本がいかにも女性が好みそうな題材だったのですが、その後はちょっとエロティックな著書が増えてきたなと思ったら、ついに「世界最古の商売」そのものを扱う本が出ました。
単行本が先行していますが、文庫化に当たって二分冊となり加筆もされています。

娼婦の館は娼館での、娼婦の街では街娼の「世界最古の商売」の様子を活写します。
扱う時代は近世から二次大戦後禁止法が公布されるまで。

資本主義が台頭し、該当に商品が溢れるのにそれを購入する財力が女性になかった時代、財力を得るために女性がどうしたのか。
「世界最古の商売」と言われるが、その隆盛は資本主義と見事にリンクしている。

そこらへんを難く描くのではなく、史料を引用したり、文学を利用したり、実にわかりやすく、一般教養書として興味が持てるように書かれています。
ゾラの「居酒屋」「ナナ」の引用、マリー・デュプレシス、リアーヌ・ド・プージィなどの高級娼婦のエピソードなどなど実に読みやすい構成になっています。
大著ではありますが、この時代のパリの裏社会に興味のある方は一読をおすすめします。

ちなみに、この時代の一級史料が洋行した日本男性の著書というのがなんとも興味深いと思いませんか?
00:17  |   |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT   このページの上へ
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