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2012'05.30 (Wed)

客も真剣勝負

野田地図 The Bee 松下円形劇場 F列8番
thebee
19:00開演、20:15終演のわずか75分の真剣勝負。
全力疾走の舞台は白刃を喉元に突きつけられているような緊張感でした。
一瞬でも気を抜くと、そこで終了、観客の負けというような芝居です。

殺人犯が親子を人質に取って民家に立て篭もり自分の妻子との面会を要求する。
被害者の夫が犯人の妻子に会った瞬間、加害者に変貌する。

確か9.11直後に初演され海外公演も行われて、復讐の連鎖の愚かしさという点で海外に衝撃を与えたという評価を聞いていました。見たくて見たくて、ようやくの大阪公演。ようやくの観劇です。

平日の夜サラリーマンも多い客席の中から、背広にビジネスバッグの野田秀樹がいきなり舞台に上がって芝居が始まります。
被害者である夫にまとわりつくマスコミ、居丈高に無責任に事件の概要を伝える警察、被害者であることを要求された夫が、犯人の妻子を説得しようと犯人の家に入ったとたん、今度は犯人の妻子を人質に立て篭もる。

『自分にマスコミや警察が要求する被害者としての資質がないことに気づいたので、加害者になることにした。』

kinkachoには、これが衝撃でしたね。
昨今の凶悪事件で、加害者に関しては報道されないのに、被害者、被害者家族は個人情報をさらされ、泣き崩れる姿を中継されます。
マスコミは報道材料としての被害者の姿をハイエナのごとく嗅ぎ回るが、その被害者が加害者に変貌した時にマスコミはどうするのだろう。
そこらへんの答は得られないのですが、劇中で加害者になった夫が立て篭もりを中継しているマスコミを射殺する場面があって、そこでは心の中で快哉を叫んでました。そして、警官を殴って拳銃を奪取した時も。
警察への不信感、マスコミへの不信感が溜まりに溜まっているようですね。

主人公は人質の指を落とし尽くし、ついに犯人に送りつけるために自分の小指を落とそうとするところで終劇。
後味の悪い終わり方のはずですが、一種のカタルシスは感じました。

キャストは宮沢りえ、池田成志、 近藤良平、 野田秀樹。
脚本家、演出家としての野田秀樹は素晴らしいですが、今回は役者としての野田秀樹も素晴らしかった。
世間から押し付けられた常識をいとも簡単に踏み越える超越者としての演技が客席を圧倒していました。

そして、いつもの役者の体をいじめまくる動き、疾走しながらのセリフ。
これを見れるだけで、観客としてのkinkachoは満足できました。
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23:30  |  舞台  |  TB(0)  |  CM(3)  |  EDIT   このページの上へ

2012'05.29 (Tue)

暴君の最初の妻

チューダーズでは、とっても気の毒なヘンリー8世の最初の王妃キャサリン・オブ・アラゴンについて少々。
キャサリン
キャサリン・オブ・アラゴン

名前が示す通り、彼女はスペインのお姫様です。
両親はスペインの再統一を果たしたイザベル女王とフェルナンド2世の末娘で、当初ヘンリー8世の兄アーサー王太子の妃としてイギリスに輿入れしてきますが、アーサー王子が若くして死去、十代で未亡人となります。
本来なら実家のスペインに帰るところですが、舅のヘンリー7世が大国のスペインとの縁を逃したくなかったのと、キャサリンの持参金を返却したくなかったので、弟のヘンリーとの縁談を持ち出してきます。
この縁談は成立するのですが、ヘンリー7世は若い世間知らずのキャサリンを騙して、ヘンリーとの婚約を成立させています。
後々、離婚の理由にヘンリーが持ち出してくる「兄嫁を娶る」という当時のタブーをキャサリンに納得させるために、法王から特許状をもらったと言いくるめてしまっているのです。
そこまでしてキャサリンをイギリスに留めておいて、持参金の未納があるからと、キャサリンがスペインから連れてきた侍女を追い返したり、約束の年金を差し止めたりして、キャサリンを心理的にも経済的にも追い詰めます。
(ここらへんの仕打ちは、ヘンリー8世が離婚する際に同じことをしています。娘のメアリーに会わせなかったり、年金を停止したり。どこまで似てるんだ、この親子!!)
当然、婚約者のヘンリー王子にも会わせません。挙式なんて大反対。
あまつさえ、自分の王妃エリザベスが亡くなると、ヘンリー7世自身がキャサリンを後添えにしようとしたりして、かなり悪辣です。
そんなこんなで、若くしてかなり苦労したキャサリンですが、ヘンリー7世が死にヘンリー8世が即位して、法王からの特許状をもらって、合法的な結婚、王妃としての戴冠を果たします。
結婚当時のヘンリー8世はスポーツ万能の偉丈夫だったようですよ。
蓄財に長けたウルジー枢機卿、人文主義者トマス・モアの補佐も得て、治世もそれなりだったようです。
夫婦仲もそれなりだったようで、子供も出来るんですが、残念ながら育ったのがメアリー王女一人でした。
これに関しては、当時の乳幼児の死亡率が高いことと、ヘンリー8世が梅○病みだったらしいのが原因ですが、生き残ったのが王子だったら、後の教会制度をも巻き込んでのすったもんだはなかったでしょう。
でも、母親がイザベル女王であるスペインから輿入れしたキャサリンにしたら、跡継ぎがメアリー王女であっても何ら問題はないと思っていたはずです。
イザベル女王
イザベル女王

しかし、ヘンリー8世は嫡出男子の継承に拘った。
弁護を多少しておくと、当時のチューダー朝の立場が微妙だったこともあります。
薔薇戦争という王位争いが終結してようやく成立したチューダー朝。ヘンリー7世がその一代目です。
ヘンリー7世には確かに王家の血は流れているのですが、その王家の血は王位継承権は否定された血筋なのです。
有態に言っちゃうと簒奪者? だから、王位継承権の補強のためにヨーク家のエリザベスを王妃にしています。
エリザベス王妃
エリザベス王妃

でも、このエリザベス王妃もヨーク家の国王エドワード4世の娘は娘なのですが、母親のエリザベス・ウッドヴィルが「王妃になるには身分が低すぎ、愛人になるには誇りが高すぎる」女性で、エリザベスの王位継承権はかなり微妙なんです。
(ヘンリー7世は、このエリザベス母娘にも年金を出さないという仕打ちをしています。本当にケチ!!)
エリザベス・ウッドヴィル
エリザベス・ウッドヴィル

そして、この時点でイギリス王家はウィリアム征服王以来、女王が立ったことがなかった。
フランスみたいにサリカ法があって女性の即位を否定しているわけではないのですが、ヘンリー1世の時代に娘のマティルダを女王にしようとして内乱になった(結局、マティルダの息子ヘンリー2世が即位)ことがあるので、メアリーを即位させるにはイギリスとしては不安があった。
だから、ヘンリー8世はチューダー朝を存続させるために、嫡出の男子がどうしても欲しかったわけです。

まあ、その願いも虚しく、せっかくの世継ぎエドワード6世は未婚のまま夭折(○毒胎内感染で病弱だった)、
メアリー1世はすったもんだで婚期を逸してフェリペ2世と結婚するも子供ができず、
エリザベス1世は処女王で未婚と、ヘンリー8世の子供の時代にチューダー朝は絶えてしまいます。

カトリック両王の末娘に生まれて、ハプスブルグ家のカール5世の叔母でありながら、人生の最初と最後に舅と夫に精神的に経済的に苦しめられるって、キャサリン・オブ・アラゴンって大変な人生を歩んだようです。
でも、廷臣、国民には敬虔な善良な王妃として慕われていたようで、彼女の亡骸がピーターバラの大聖堂に運ばれる時は、政府からの禁止令が出ていたにもかかわらず、国民が代わる代わる棺を担って運んだそうです。

故ダイアナ皇太子妃の「心の王妃」という呼称は、このキャサリンの呼称から由来しています。

kinkachoの思う、キャサリン・オブ・アラゴンの最良の日本語の参考文献は石井美樹子著「薔薇の冠」です。
是非ご一読ください。
小西章子著「スペイン女王イサベル」を併せて読むと、キャサリンが女子の王位継承者もアリだと考えた理由がわかります。
08:32  |  テレビ  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT   このページの上へ

2012'05.29 (Tue)

古今東西時代劇

チューダーズを10巻まで見ました。

アン・ブーリンの処刑までです。

まだ9巻残っていて、嫁もあと4人残っています。
二人目の嫁で半分以上巻数を使ったのは、やはりアンとの結婚が一番の山場だったということです。

ここまでで理不尽に亡くなった方は、ウルジー枢機卿、トマス・モア、キャサリン・オブ・アラゴン、アン・ブーリンです。
見事に知ってる名前ばかりで、ヘンリー8世の妻か寵臣というあたりが、ヘンリーの歪んだ性格を表しています。

このドラマを見て思ったのは、古今東西時代劇は史実じゃないよ~というお話。
思わず、歴史書をひっくり返して調べましたもの。
ヘンリーの姉ちゃんの嫁ぎ先はスコットランドで、サフォーク公が結婚したのはヘンリーの妹だ!
他にもいろいろありますが、そこは大河ドラマみたいなものだからねえ。

ただ、大河ドラマと違うのはエロ多めということ。
ヘンリーは女を片っ端からですが、近臣はBLもありと、間違ってもイギリスの歴史の勉強にと子供に見せてはいけません。
斬首刑はけっこうリアルに首と血が飛んでますし、一応R15指定です。

俳優陣はヘンリーと取り巻きはイケメンで一見の価値アリ。
チューダーズ
ヘンリー:ジョナサン・リース・マイヤーズ
ウルジー枢機卿:サム・ニール
トマス・モア:ジェレミー・ノーサム
サフォーク公:ヘンリー・カヴィル
トマス・クロムウエル:ジェームズ・フレイン
特にサフォーク公はマッチョな男前です。ダンヒルのフレグランスのイメージキャラもやってました。
女性陣は
キャサリン・オブ・アラゴン:マリア・ドイル・ケネディ
アン・ブーリン:ナタリー・ドーマー(安室奈美恵に似てます)
ジェーン・シーモア:アナベル・ウォーリス

そして、スペシャルキャストに、ピーター・オトゥールとかマックス・フォン・シドーが出ていて、かなり嬉しいです。どちらも枢機卿の緋色の衣が貫禄です。

頑張って続きを見ます。
00:21  |  テレビ  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT   このページの上へ

2012'05.24 (Thu)

ただ今鑑賞中

前々から気になっていた海外テレビドラマのDVDをレンタルで発見しました。

チューダーズ 背徳の王冠 全19巻

ヘンリー8世のお話です。
キャサリン・オブ・アラゴンとの離婚から晩年までを描いてます。
ただ今6巻まで見終わったところで、キャサリン王妃との離婚を強行して、イングランド国教会が成立して、アン・ブーリンと結婚、エリザベス王女が誕生したところです。

ヘンリー8世を演じている役者がなかなか精悍な男前で目の保養になります。
この時代ですから、当然、タイツにかぼちゃパンツですが…コッドピースもしっかり付いております。
けっこう衣装の時代考証がしっかりしていて、先のコッドピースに、上着のスラッシュからシャツを見せる着こなしや、胸を押さえつけるような女性のドレスなど、なかなか頑張っています。

そして、ローマ法王役パウロス3世役でかのピーター・オトゥールが出演しております。
すっかりご老人になっておられますが、あの緑青の瞳は健在です。

全巻見終わったら、是非記事にしたいと思います。
12:01  |  テレビ  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT   このページの上へ

2012'05.17 (Thu)

チン毒を賜う

前の記事の映画「王朝の陰謀」の火炎虫を見て思い出したのがチン(鳥)です。
火炎虫は浸けておいたり、接触したりすると発火性の毒に冒されるようですね。
同じように、チンの羽には毒性があって、この羽を酒に浸けてチン酒を作り毒殺に使うのは、中国王朝のお約束です。
今回のブログのタイトル「チン毒を賜う」または「チン酒を賜う」というのは君主から死罪を言い渡されることを指します。
実際のところ、チンは架空の鳥で、亜砒酸を使ったそうです。
(世の東西を問わず、砒素は毒殺のデフォルトですね。愚者の毒薬とも言うのに…)
しかし、パプアニューギニアには羽に毒を持つ鳥が実際にいるそうで、チンはその鳥の絶命種という説もあります。
スグロモリモズ
(スグロモリモズ 毒鳥)

さて、ごく最近、中国・重慶市で共産党幹部の薄氏が英国人を殺害した事件がありましたよね。
食事に招いて、椅子に押さえつけて、毒を飲ませたという手口を聞いて、
「チン毒か?!」
とkinkachoは新聞に突っ込んでしまいました。
21世紀に入って12年も経とうというのに、この手口とは…
しかも、薄氏の子息はハーバードに留学中。
奨学金を取得とか言ってますが、広いアパートメントに住んで高級車を乗り回していたそうです。
ハーバードは特別枠で入って、奨学金という国費を使ってるって訳ですね。

中国四千年の腐敗政治の伝統は現在も継続中のようです。
22:52  |  文化・芸術  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT   このページの上へ

2012'05.16 (Wed)

行きましたとも!!

ごみつさんの強い推薦を受けて行きましたとも!!

20120516.jpg
王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件 心斎橋シネマート

中国・唐王朝初期、武則天の即位直前に謎の人体発火事件。
その謎を解明するために武則天は、かつて自分に逆らい獄に落とした狄仁傑を呼び戻す…

ピンインでディー・レンチェと言われても一体誰のことかわかりませんでした。
テキジンケツ(狄仁傑)のことだったのか~と分かったら話の面白さは倍増します。
名判事として有名な人物に探偵役をさせるという趣向です。まあ映画はアクションが主体ですが…

kinkachoが注目したのは女性二人、武則天とチンアルです。
武則天は有名な中国三大悪女(呂后・武則天・西太后)の一人にして、中国唯一の女帝。
徳川光圀の「圀」の字を作った人です。(則天文字ですね)
太宗の後宮からいったんは尼寺に入れられながら、高宗の後宮に返り咲き、見事に皇后までに登り詰め、帝位簒奪に成功した女傑です。
中国の三大悪女の皆さんはいずれも政治能力に富んだ人ですが、特に武則天は一歩抜きん出ていたのではと思います。
この後に続く玄宗の貞観の治も武則天の地ならしがあったからだと信じています。
だから、玄宗の即位の直前にある韋后の専横と武則天の即位が合わせて「武韋の禍」と呼ばれるのは甚だ不本意です。
その点、この映画は武則天を単なる簒奪者として描かず、民を安んじることに置いては名君と扱っているのはgoodです!
そして、もう一人チンアル。
あくまで映画の創作人物ですが、おそらくは武則天の側近・上官婉児をモデルにしたと思われます。
上官婉児は祖父が武則天に逆らい処刑され、獄に落とされるところを武則天の温情で後宮で養われた女性です。
才気煥発なところを武則天に寵愛され、著作を残したりして、日本の清少納言みたいな人です。
まあ、ご本人は武則天の死後、韋后に媚びたり、太平公主(武則天の娘)に靡いたりして、保身を図るのですが、最後は玄宗に処刑されます。
当然チンアルみたいに武術は使えませんので、あしからず。
kinkachoとしてはチンアルの額に刺青を入れておいて欲しかった。
上官婉児は武則天に逆らって刺青を額に入れられてるんですね。
でも、武自身がかわいがっていたものだから、刑吏に小さく入れろと命じて、黒子みたいだったそうです。
そこで、婉児は刺青を花鈿で彩って、かえって魅力的にしたというエピソードを生かして欲しかったなあと思います。

結局、中国って、強い女性に支配されないように、儒教で女性をがんじがらめにしたのではないかと思います。
それでも、勝てなくって、武則天や上官婉児のような歴史に悪女として刻まれる女性が出てしまうというのが、結論ではないでしょうか。

今回、上映前の韓国映画の予告編にウンザリして、本編上映が始まるとホッとしました。
今回の映画鑑賞で、kinkachoは視覚的にも聴覚的にも韓国は受け付けない、中国の方が大丈夫ということが判明しました。
だって「冬ソナ」も「チャングム」もチラ見でも苦痛でしたもの。
23:26  |  映画  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT   このページの上へ

2012'05.14 (Mon)

看板モフモフ

何じゃこりゃ~!!の数字を見て以来、運動として歩きたいけど、誘惑が多い町歩き…
パン屋、ケーキ屋、アイスクリーム屋、フレンチ惣菜屋の誘惑に耐えながらの町歩きはストレスです。
そんな時の心の癒しは
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ちょっとご年配でお疲れ気味ですが、うどん屋さんの看板モフモフ~
愛想振りまきまくるタイプではなく、差し出した指の臭いを確認してから、触って欲しい場所を指の前に持ってきます。右耳の後ろあたりがご所望のようで、しばしカリカリさせていただきました。
「ミーちゃん」(kinkachoはネコはとりあえずミーちゃんと呼ぶ)と声をかけると、ちっちゃな声で「ミー」と返してくれました。
消極的な看板ネコですが、心和むには十分でした。
23:26  |  雑感  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT   このページの上へ

2012'05.09 (Wed)

何じゃこりゃ~!

タイトルを雑記からダイエット日記にしないとヤバい!

今日は健康診断だったのですが、朝一に体重を測られて、気絶しそうになりました。
生涯最高の数値…
順調に肥え太っておりました。
しかも、お年がお年なだけに、太り方が若い頃と違うよ!
若い頃はプリっだったのに、今はポテ?いやボテ?
脂肪の重みに皮膚が耐えられなくて、重力に負けてます。
何が悪いのかはわかってます。
あ~んなのや
moblog_27b30d77.jpg
こ~んなののせいです。
揚げだし
ああ、それなのに、また新しいパン屋を見つけてしまいました。
涙がでます…
moblog_1fba0c40.jpg

ワイヤが抜けたら、ラン帰宅が確定ですね。
20:18  |  雑感  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT   このページの上へ

2012'05.06 (Sun)

おしゃれなだけに残念

草原の王朝 契丹 大阪市立美術館
契丹ポスター
このポスターのセンスの良さにびっくりです。
契丹チラシ
さらに、チラシの斬新さに驚嘆!
いつの間にこんなセンスを身につけたのかしらと感心していたのですが、宣伝活動はいまいちのようで会場はガラ空きでした。
kinkacho的にはゆっくりじっくり展示を楽しめて満足です。

契丹です。半農半牧なので、遊牧民と言っていいのか悩むところですが、中原にプレッシャーをかけたということでは同様です。
遼を建国してからは北宋に迫って燕雲十六州(当時の中国の紛争地帯)を割譲させたり威勢を誇りましたが、女真の金に国を滅ぼされて、チンギス・ハーンに止めをさされました。
その遼を建てた耶律氏の末裔・耶律楚材さんとは卒論でさんざんお付き合いしました。
元の南宋攻略で、主将・伯顔とセットで参謀として史料に出てきたお方ですので(最近、耶律楚材が実在の人物ではないとの学説が出て、驚愕しましたが…)、kinkachoはこの展覧会がとても楽しみでした。

この展覧会の展示は、最近発掘された墳墓の埋蔵品が中心で、陽明文庫展とは真逆のアプローチでした。
連れとkinkachoは文献学アプローチ派なので、内心「考古学は発掘したら一発逆転だからな」と含むところはあるのですが、夫婦(契丹でも降嫁政策ありで公主が嫁)で合葬されている出土状況や見事な棺の装飾、副葬品を見ると、物語が見えるようで感ずるところがありました。
この展覧会を企画した学芸員の趣味丸出しでとても面白い展覧会です。
東京でも開催があるようなので、そちらの方面の方は是非足を運んでください。

お勧めの予習本は「中国の歴史8 疾駆する草原の征服者―遼 西夏 金 元」(講談社)です。
というか、これぐらいしか一般書では思いつきません…遊牧民には冷たいぞ、日本の出版界。
展覧会も空いてるし、みんな、遊牧民に興味ない?
遊牧民へのアプローチも一昔前は、ソ連のスキタイ研究がほとんどで、kinkachoの先生がイスラム化以前トルコ民族をやってたのが珍しくて、やっと中国が周辺の遊牧民の研究をやってくれるようになったんですがね…
遊牧民は史料残してないから、そのせいで一般書のネタがないのも事実。
唯一の史料の中国の史書では、夷狄、蛮族扱いだからどうしようもないです。

庭園
↑隣接の庭園から見ると、とても立派な大阪市立美術館
18:02  |  文化・芸術  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT   このページの上へ

2012'05.05 (Sat)

キーマカレーを食べながら

ごみつさん推薦のDVDをレンタルして見ました。

十三人の刺客

残虐の限りを尽くす将軍の弟を大目付の密命で討つ。
切って切って切りまくる時代劇活劇。

公開時から話題になっていた作品です。吾郎ちゃんの暗君ぶりが見事と聞いていたので食指は動いていました。

冒頭、内野聖陽扮する明石藩家老の切腹から始まります。
養子として明石藩藩主・松平斉韶となった吾郎ちゃんの暴虐ぶりをお上に訴えるためです。

この切腹、腹を十字にかっ捌いております。
自分で、腹を十字にかっ捌いて、内蔵を三方に載せて、頸動脈を切って絶命するのが正式な切腹です。
記録でもこれができた剛の者は二人しかいません。
(スプラッタは嫌いでも、切腹については語れる史学科出身者です)
この映画の時代になると「扇子腹」(刀に見立てた扇子を腹に突き立てた形にしたら、介錯が頸動脈を切って絶命させる)がほとんどなので、それだけで殿のご乱行ぶりが尋常でないとわかります。

この命を賭した嘆願は斉韶が将軍の実弟で、老中昇格も決まっているため、老中(平幹)も苦悩する。
その大目付に明石守の非道を訴える尾張藩本陣詰役(幸四郎)の訴えを聞くに及び、老中は目付・島田(役所広司)に斉韶暗殺の密命を下します。
ここから刺客の選抜が始まり、攻撃を受ける側の明石藩家老・鬼頭(市村正親)との頭脳戦が始まります。
刺客の選抜と島田VS鬼頭の頭脳戦が、この映画の見所でしょう。
12代将軍・家慶の時代の話ですから、もう武士が武士たる拠りどころを無くしている時代です。
その持って行き所のない武士の気概を持った人間達が島田の元に集まり、襲撃の場所は美濃・落合宿と決定。
策を廻らし万全の準備を整える刺客達と、斉韶の気性ゆえ受けて立つしかなかった鬼頭はじめ明石藩は「殿を生かして通せば勝ち」の覚悟で落合で激突します。

この物量に物言わせた激突シーンは見ごたえはあるけど、ちょっと長い印象を受けます。
この激突シーンをもう少し上手く削ったら中だるみはなかったかなとちょっと残念。

でもまあ、この映画のキャストの豪華なこと。
内野、平幹、幸四郎、役所、市村、松方、伊原(案外剣豪役が多い)、古田新(新感線の舞台で立ち回りに慣れてる)…と出せるだけ頑張ってみましたというキャスティングでしたね。
殺陣いうには派手すぎる演出でしたが、これはこれでアリ。
女性は斉韶の被害者としてしか出ないのですが、牧野(幸四郎)の息子の嫁の青眉と鉄漿の姿はいかにも新妻という感じで初々しくかつ色っぽかった。
ここらへんのこだわりも好きです。

そして、出色の出来はやはり吾郎ちゃんでしょうか。噂通りの残虐な暗君ぶりでした。
特に演技力があるわけではないのですが、kinkachohはちょっとジル・ド・レを思い出してしまいました。
ジャンヌ・ダルクと一緒に戦っていた時はよかったのだけれど、戦後、自分の残虐性を持て余したフランスの武将とちょっとかぶってしまいました。
斉韶も戦国時代に生まれていたら、多少残虐なことしても、勇猛なんて評価を受けていたかもしれません。

要するに、島田はじめ13人の刺客も、斉韶も、そして、鬼頭も武士が武士として生きることができる時代なら、よかったのにね…と思う作品でした。
10:34  |  映画  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT   このページの上へ

2012'05.04 (Fri)

GWは京都で

陽明文庫?!御堂関白日記か?!

展覧会が耳に入った途端、kinkachoと連れは盛り上がりました。
陽明文庫
王朝文化の華 陽明文庫名宝展 京都国立博物館

開館と同時に入場する!!との決意と共に、いざ京都・七条へ。
連れは手作りの藤原氏の系図を持参していました。熱いぞ、日本史専攻!!
陳列ケースに展示されているのは見事に、日記、消息、写本、写経…
「道長って、字、下手!」
「嵯峨帝って、三筆?」
「熊野懐紙の本物~!」
と連れとkinkachoはハイテンション。
飽きることなくケースにへばりついてました。
「さすがだぜ、近衛家!!」
摂関家へのほめ言葉とは思えない言葉で絶賛しながら、崩し字になると歯が立たない文書に興奮し、たまにトラップのように出てくる利休が自分で削った茶杓なんかにおののきながら、無事館外へ出たときは正午直前。
国立博物館
大半は文書だったので、王朝文化華やかなりし頃の絢爛たる衣装や調度を期待した人にはつらかったかも~と語り合いながら智積院・茶寮ききょうでとろ湯葉丼の昼食です。
とろ湯葉丼
湯葉と京風の薄い味付けのあんをご飯にかけた湯葉丼、だしをきかせた汁にくみ上げ豆腐が入った椀物、サラダ、香の物というヘルシーなランチセットです。
豆腐の豆の甘さが生きていて美味でした。
智積院
昼食後、智積院を散策してみました。
00:36  |  文化・芸術  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT   このページの上へ

2012'05.03 (Thu)

映画2連チャン

連休の中休みは終業後には映画です。
昨日は映画の日だったし、今日はレディスデイなので。

アーティスト

本年度アカデミー賞作品賞受賞作。
ぶっちゃけ「マーガレット・サッチャー」の方が見ごたえがありました。
出来が悪い映画ではないのですが、単なるアカデミー好みだろうなあ…というのが正直なところです。

サイレント全盛期のスター・ジョージはある日であったぺピーにちょっとしたアドバイスをする。
サイレントからトーキーへの移行期、ぺピーはスターに、サイレントに固執するジョージは落ちぶれる。
そして…

スターになった少女が恩人に救いの手を差し伸べるというストーリーをサイレント&モノトーンという手法で映画にしています。
3D全盛の昨今、映画好きの作り手が古き良き時代のノスタルジーとオマージュとして作ったという感じがします。
アカデミー賞を取らなければ、いい映画だねと納得できたのですが、受賞しちゃったんでちょっと素直に見れません。
もっともアカデミーが、自分の好み、良識で受賞させるのは周知の事実なので、仕方ないですね。
「俺たちゃ、3DとかVEとか技術なんてどうでもいいんだよ。
芸術的ないい映画が撮りたいんだけど、客が入らないから仕方ねえじゃないか!」
という製作者の叫びが、サイレントとモノクロの画面からうるさく聞こえました。

と思うのは、アカデミー協会へのkinkachoの僻みでしょうか。
でも、いい映画なので、映画館で見てもいいかも…
本当は大画面で見るしかなさそうな「バトルシップ」が見たかったのですが、時間が合わなかったのでこっちに来てみました。
プレート
↑夜行バスで上高地に入る一行のお見送りまで時間があったので、ヘルシープレートと白ワインで時間をつぶしてました。
21:27  |  映画  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT   このページの上へ

2012'05.02 (Wed)

ディズニー生誕100周年だから

せっかくなんだから、これじゃなくてアニメーション映画を作ればよかったのに…
客もそこらへんを期待してたと思うよ。

ジョン・カーター

麗しのデジャー・ソリスの件で、すでにこのブログは前評判(?)だった問題の映画です。
原作はエドガー・ライス・バロウズの「火星のプリンセス」です。
(1~3作までをまとめたと聞いていましたが、見た感じでは「火星のプリンセス」+αぐらいでした。)
デジャー・ソリスに諦めがついていたら、案外見れる映画でした。
原作を読んでいる人間は、デジャー・ソリスはどうせ実写不可能(緑色人とか大白猿とかはVEで可能ですけどね)だからと思ってるし、映画用の不要な設定を意識から削除しているから、南部男のジョン・カーターが火星で大活躍しちゃう冒険活劇として見たら、そんなに大コケしないと思うのですが…
「ディズニー生誕100周年」の冠が邪魔だったと思うのですが、どうでしょう???

他に失敗の原因を挙げるとすれば、ジョン・カーターが妻子を亡くして心に傷を負っているという点?
誰もジョン・カーターにトラウマなんて期待していないから!!
要らん小芝居は不要。素直に活劇をやってください。

デジャー・ソリスがイケイケの武闘派の科学者なのが、もう原作と真逆なんで、いっそ清々しいくらいで、タルス・タルカスとソラが動いてるのと、愛犬ウーラの忠実さは原作ファンは嬉しいかも…

でもね、原作ファンとしては、「私のプリンセス」「私の大尉(キャプテン)」のセリフがなかったのは許せないよ。
これ二人の関係にはとっても重要なセリフなのに…

続編作る気満々のエンディングでしたが、噂のコケっぷりではきっと無理でしょうね。
08:14  |  映画  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT   このページの上へ
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