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2012'05.30 (Wed)

客も真剣勝負

野田地図 The Bee 松下円形劇場 F列8番
thebee
19:00開演、20:15終演のわずか75分の真剣勝負。
全力疾走の舞台は白刃を喉元に突きつけられているような緊張感でした。
一瞬でも気を抜くと、そこで終了、観客の負けというような芝居です。

殺人犯が親子を人質に取って民家に立て篭もり自分の妻子との面会を要求する。
被害者の夫が犯人の妻子に会った瞬間、加害者に変貌する。

確か9.11直後に初演され海外公演も行われて、復讐の連鎖の愚かしさという点で海外に衝撃を与えたという評価を聞いていました。見たくて見たくて、ようやくの大阪公演。ようやくの観劇です。

平日の夜サラリーマンも多い客席の中から、背広にビジネスバッグの野田秀樹がいきなり舞台に上がって芝居が始まります。
被害者である夫にまとわりつくマスコミ、居丈高に無責任に事件の概要を伝える警察、被害者であることを要求された夫が、犯人の妻子を説得しようと犯人の家に入ったとたん、今度は犯人の妻子を人質に立て篭もる。

『自分にマスコミや警察が要求する被害者としての資質がないことに気づいたので、加害者になることにした。』

kinkachoには、これが衝撃でしたね。
昨今の凶悪事件で、加害者に関しては報道されないのに、被害者、被害者家族は個人情報をさらされ、泣き崩れる姿を中継されます。
マスコミは報道材料としての被害者の姿をハイエナのごとく嗅ぎ回るが、その被害者が加害者に変貌した時にマスコミはどうするのだろう。
そこらへんの答は得られないのですが、劇中で加害者になった夫が立て篭もりを中継しているマスコミを射殺する場面があって、そこでは心の中で快哉を叫んでました。そして、警官を殴って拳銃を奪取した時も。
警察への不信感、マスコミへの不信感が溜まりに溜まっているようですね。

主人公は人質の指を落とし尽くし、ついに犯人に送りつけるために自分の小指を落とそうとするところで終劇。
後味の悪い終わり方のはずですが、一種のカタルシスは感じました。

キャストは宮沢りえ、池田成志、 近藤良平、 野田秀樹。
脚本家、演出家としての野田秀樹は素晴らしいですが、今回は役者としての野田秀樹も素晴らしかった。
世間から押し付けられた常識をいとも簡単に踏み越える超越者としての演技が客席を圧倒していました。

そして、いつもの役者の体をいじめまくる動き、疾走しながらのセリフ。
これを見れるだけで、観客としてのkinkachoは満足できました。
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