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2012'05.06 (Sun)

おしゃれなだけに残念

草原の王朝 契丹 大阪市立美術館
契丹ポスター
このポスターのセンスの良さにびっくりです。
契丹チラシ
さらに、チラシの斬新さに驚嘆!
いつの間にこんなセンスを身につけたのかしらと感心していたのですが、宣伝活動はいまいちのようで会場はガラ空きでした。
kinkacho的にはゆっくりじっくり展示を楽しめて満足です。

契丹です。半農半牧なので、遊牧民と言っていいのか悩むところですが、中原にプレッシャーをかけたということでは同様です。
遼を建国してからは北宋に迫って燕雲十六州(当時の中国の紛争地帯)を割譲させたり威勢を誇りましたが、女真の金に国を滅ぼされて、チンギス・ハーンに止めをさされました。
その遼を建てた耶律氏の末裔・耶律楚材さんとは卒論でさんざんお付き合いしました。
元の南宋攻略で、主将・伯顔とセットで参謀として史料に出てきたお方ですので(最近、耶律楚材が実在の人物ではないとの学説が出て、驚愕しましたが…)、kinkachoはこの展覧会がとても楽しみでした。

この展覧会の展示は、最近発掘された墳墓の埋蔵品が中心で、陽明文庫展とは真逆のアプローチでした。
連れとkinkachoは文献学アプローチ派なので、内心「考古学は発掘したら一発逆転だからな」と含むところはあるのですが、夫婦(契丹でも降嫁政策ありで公主が嫁)で合葬されている出土状況や見事な棺の装飾、副葬品を見ると、物語が見えるようで感ずるところがありました。
この展覧会を企画した学芸員の趣味丸出しでとても面白い展覧会です。
東京でも開催があるようなので、そちらの方面の方は是非足を運んでください。

お勧めの予習本は「中国の歴史8 疾駆する草原の征服者―遼 西夏 金 元」(講談社)です。
というか、これぐらいしか一般書では思いつきません…遊牧民には冷たいぞ、日本の出版界。
展覧会も空いてるし、みんな、遊牧民に興味ない?
遊牧民へのアプローチも一昔前は、ソ連のスキタイ研究がほとんどで、kinkachoの先生がイスラム化以前トルコ民族をやってたのが珍しくて、やっと中国が周辺の遊牧民の研究をやってくれるようになったんですがね…
遊牧民は史料残してないから、そのせいで一般書のネタがないのも事実。
唯一の史料の中国の史書では、夷狄、蛮族扱いだからどうしようもないです。

庭園
↑隣接の庭園から見ると、とても立派な大阪市立美術館
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Comment

●わ~い

こちらでも今晩は。

東京でも7月から開催なので、前もってKinkachoさんの記事が読めて嬉しかったです!
お勧めの本のご紹介も有難うございます!!
まだ2ケ月ほどあるので、是非読んで、多少なりとも知識を頭に入れてのぞみたいと思います!楽しみだな~。v-10

ちょこっと前に昔の「NHK特集シルクロード」見てたのですが、番組の中で当時まだお元気だった司馬遼太郎氏が、「遊牧騎馬民族は、建造物も作らず、文字で記録も残さず、ただ風の様にこの地上を駆け抜けていくだけの存在なのが、たまらない!」っておっしゃてて印象的でした。彼はモンゴル語が出来るんですよね、確か。v-230

騎馬民族は大好きなんですって。日本人は農耕民族だから、あんまり騎馬民族は人気がないのかな~?
ごみつ | 2012年05月08日(火) 01:21 | URL | コメント編集

●縦書きに挑めば

ごみつさん、こんにちは。
契丹は契丹文字、西夏は西夏文字、モンゴルはモンゴル文字、イスラム化以前のトルコはトルコ文字があるので、文献がないこともないのです。ちなみに全部、基本的に縦書きです。
契丹文字、西夏文字もかなり解読が進んでいて(しかも日本で)、文献、碑文から事績は読み取れるのですが、周辺の傍証資料が少ないので、裏づけができないんですね。
チンギス・ハーンがつけていた日記なんてないですかね。耶律楚材あたりなら、忘備録をつけてそうな気がしますが…
kinkacho | 2012年05月08日(火) 09:01 | URL | コメント編集

●偏見

この展覧会はぜひ、足を運びたいですね。休日は無理かもしれませんが、なんとか平日の夜にでも。
どうも、日本の学校教育では、遊牧民族にあまり視点をおかないので、軽視されがちだと日頃から感じています。ユーラシア大陸の歴史は、遊牧民族なくして語れないほど重要だと思います。シナの王朝なんざ、遊牧民族出身者だらけですし、遊牧民族が歴史を作ったといっても過言ではないと思うのですが、文献がシナやロシアのものが中心なので、軽視されてしまうのでしょうかね。私はある種の偏見を感じることもありますが・・・
ヌマンタ | 2012年05月08日(火) 12:44 | URL | コメント編集

●是非

ヌマンタさん、こんにちは。
この展覧会は是非足を運んでください!!
kinkachoのいた東洋史学科は中国史の他、中央アジアを研究している先生がいたので、遊牧民は身近でした。
(というか、そういう先生がいたので進学したのですが)
学生の頃にソ連(←注目!!ロシアではございません!)アカデミーでスキタイの研究してる人とと話す機会があったのですが、何でも「わが国の~」になっちゃうので、こいつらの研究は信用できんな~と疑ってしまいました。中国の研究論文もけっこうそんな感じです。
遊牧民に国境なんてないよ!!と言ってやりたくなります。
kinkacho | 2012年05月08日(火) 23:42 | URL | コメント編集

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