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2009'09.17 (Thu)

消えた横浜娼婦たち 港のマリーの時代を巡って

檀原照和著。
ラシャメンの系譜を引く「メリケンお浜」とパンパンの生き残り「白いメリーさん」の二人の娼婦の人生が二本柱の横浜の外国人相手の娼婦の歴史を描いたドキュメンタリー。
読み応えはありますが、kinkachoの頭の中で、「メリケンお浜=猟奇」、「白いメリーさん=ホラー」の公式が成立しているため、素直にドキュメンタリーとして読めませんでした。
これは先行して読んでいた唐沢なをきと中島らもの一種の悪影響です。

主軸になった二人の生涯があまりにも強烈なため、横浜娼婦の歴史のドキュメンタリーとしては、通り一遍歴史をなぞっただけで希薄な印象が残ります。
そして、主軸の二人の娼婦には継続性が感じられず、一概に「横浜娼婦」というひとつのカテゴリーにくくって一冊の書物にまとめることに無理があったようにも思います。
さらに、取材を本人(死亡していたため本人からは取材できなかった)からではなく、周囲の人間からしているため、傍証でしかないことも迫真になっていない原因です。

やはり、この種のドキュメンタリーは、初めに読んだインパクトもあり、kinkacho的最高峰です。
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Comment

●No title

横浜は黄金町をはじめとして、警察の手入れを受けて壊滅状態。でも無くなったわけではなく、裏にもぐってより陰湿化しただけです。いつの世でも、性をネタにした商売は絶えることはありません。裏にもぐらせれば、かえって不幸なことになることを分らない頭のいいアンポンタンがはびこっているようです。もっと、人間という生き物の本性を直視しろと言いたいですね。
ヌマンタ | 2009年09月18日(金) 12:54 | URL | コメント編集

●一番疎い世界

ヌマンタさん、こんにちは。
この題材の本は読むのですが、歴史的切り口の本に偏りがちです。
やはり人間の本能に根差した世界なので業が深いと思います。
kinkacho | 2009年09月18日(金) 21:26 | URL | コメント編集

●ご感想ありがとうございます

ご紹介頂きましてありがとうございます。
著者の檀原です。
感想をいただき、大変嬉しく思います。

>横浜娼婦の歴史のドキュメンタリーとしては、通り一遍歴史をなぞっただけで希薄な印象が残ります。

序章に関しては、まったくその通りだと思います。
しかし「メリーさんがなぜ有名になったのか」「メリーさんを歴代の娼婦の系譜に位置づける」といった事に関する考証、そして「港の海賊の話」は、通り一遍歴史をなぞっただけではないと思います。
「港の霧」の話にしてもしかり。
いかがでしょうか?

また黄金町の話にしても、「当事者」である特殊飲食店街の会長に話を聞きました。
(これは先行する八木澤さんの「黄金町マリア」を意識して、あえて女性ではなく男性を語り手にしようという意図からです)
黄金町のちょんの間街の詳しい歴史は、どこにも書いていないはずです。
(とくに初期の話は「堀田さん(仮名)」しか知らないと思います)

浅いといってしまえば浅いですが、「現場で働く女性の生の声」を拾おう、という考えは初めからありません。
そういう本はすでに多くの先人が形にしており、いまさらそれにつづくことに意味があるとは思えません。
横浜の「外国人専門娼婦」の系譜がまだつづいていれば別ですが、それは遠い過去の話で、いまさら当事者を捜し出してほじくり出し「迫真性」を見いだす、というのは拙著の趣旨ではありません。
(人身売買され、強制売春させられているじゃぱゆきさんの話など、別のテーマであれば有効かもしれません)

>周囲の人間からしているため、傍証でしかないことも迫真になっていない原因です。

メリケンお浜の生年月日や墓のある場所など、はじめて証される事実は多いのですが、どう思われましたか?
とくに生年月日は、姪子さんに頼んで戸籍謄本に当たっていただきました。
(今までに書かれたお浜さんの本はすべて小説で、ドキュメンタリーはありません)
 娼婦の研究本の古いものであれば、断片的に彼女のことが実話ベースで紹介されていますが、「中国人とのハーフ」「市外から流れてきたらしい」などいい加減な記述が目立ちます。
拙著では「グロテスク」や「国民新聞」など戦前の新聞・雑誌をいくつも発掘し、可能な限り手間を掛けて文献にあたっています。
お浜から直接取材した新聞記事の引用もしています。
「傍証」というのは、ちょっと納得できません。
本人が生きていたとしても、本当のことは話してくれなかったでしょうし。
(実際、梅原北明がお浜から直接聞いた話は、デタラメでした)

>主軸の二人の娼婦には継続性が感じられず、

「売れっ子娼婦」のお浜と「現役の娼婦としては終わっていて、立ち続けることで伝説になったメリーさん」は対照的です。
ふたりは対になる存在で、連続性を云々という声が出るとは思っていませんでした。
二人は似た部分がありながら、それでいて対照的という不思議な組み合わせです。
そもそも連続性を持たせようとは考えていませんでした。
(世代的には連続していますが、それはそれです)

本書の特徴は、「タイトルこそ『横浜娼婦たち』だが、むしろ娼婦の話をフックにして街の裏面史をえぐり出した本」だということです。
主役は娼婦というよりも、むしろ横浜の街です。
華やかな表側のみならず、「外国人専門娼婦」という裏の部分も含めて、横浜は類を見ないような「国際都市」だったわけですが、海運業の近代化や合理化、海から空への転換などによってそのエキゾチシズムを失い、平凡な観光地に堕していった、というのが拙著の概要です。
「サンダカン八番娼館」とは方向性が違います。
いえ、あれこそがノンフィクションの王道なのはよく分かっています。
「消えた~」の方が変なんですけどね。
ノンフィクションでは常識の前書きもありませんしね。
「迫真性」ではなく、「100%事実だけを組み上げて、等身大の神話を成立させる」というのが、あの本でやりたかったことです。
おそらくこちらが意図していることと、kinkachoさんが娼婦の話に求めるもの間に、ギャップがあるんでしょうね。
でも無責任に持ち上げられるより、批判して頂く方が嬉しいですよ。

ちなみに娼婦ものの最高峰は、個人的には(イレギュラーですが)佐野 眞一・著「東電OL殺人事件」です。
檀原 | 2009年09月20日(日) 00:34 | URL | コメント編集

●追記

八木澤 高明さんの「黄金町マリア」はお読みになりましたか?
kinkachoさんが好きなのは、こういう本ではありませんか?

ところで、
>kinkachoの頭の中で、「メリケンお浜=猟奇」
とありますが、唐沢なをきさんはメリケンお浜の漫画を描いたことがあるのでしょうか?
もしそうだとしたら、タイトルを教えて頂けませんか?

ちなみに上村一夫が「淫花伝 本牧お浜」という漫画を描いてますが、昭和4~50年代チックな劇画です。
檀原 | 2009年09月20日(日) 00:47 | URL | コメント編集

●恐縮です

著者の方からコメントをいただくことは想定しておりませんでした。恐縮しております。
このブログはkinkachoが日々読んでいる本に関する思ったことを書き散らしているだけですので、素人の浅い読みと読み流していただければ幸いです。
唐沢氏の著者は漫画ではなく、日本の猟奇事件を扱った本の中の一編で、夫人との共著です。
kinkacho | 2009年09月23日(水) 11:11 | URL | コメント編集

●No title

唐沢氏の著作ですが、検索した限りではそれらしいものが見あたりませんでした。
ヒットしたのは「なをき・よしこのパソコン夫婦バンザイ」「オトナでよかった! 」「けんこう仮面」あたりです。
夫婦の共著ではなく、オムニバス短編集収録かなにかですか。
あるいは、もしかして「唐沢俊一×ソルボンヌK子」の猟奇シリーズの中の一冊でしょうか。
どうしても読みたいので、教えて下さい。
よろしくお願いします。
檀原 | 2009年09月26日(土) 03:15 | URL | コメント編集

●たびたび恐縮です

檀原様、kinkachoの記憶違いでご迷惑をおかけしました。
「唐沢俊一×ソルボンヌK子」の猟奇シリーズの中の、おそらく一冊目です。幻冬舎文庫だったと記憶していますが、また記憶違いでしたら申し訳ありません。
メリケンお浜のエピソードでは、生卵を飲んで、肌がツルツルとか、デビューが遅かったとか、わざと着崩して露出を多くしていたことが印象に残っています。
kinkacho | 2009年09月28日(月) 18:03 | URL | コメント編集

●ありがとうございます

情報ありがとうございました。

お浜のデビューの時期に関しては「早い」「遅い」二つの説があるのですが、チャブ屋女の平均年齢は20歳くらいでしたので、遅かったら雇ってもらえないだろうと考え、拙著では早い説を採用しました。

詳しく書いてありそうなので、読むのが楽しみです。
檀原 | 2009年09月30日(水) 01:18 | URL | コメント編集

●記憶違いでなければ

檀原様、ご丁寧にありがとうございます。
ページ数はさほど多くなかったのですが、非常に印象が強かったので記憶にひっかかていたのだと思います。
あくまで記憶ですので、期待外れだったらすみません。
kinkacho | 2009年09月30日(水) 09:10 | URL | コメント編集

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